2010年02月02日

淵となりぬる

つくばねの峰よりおつるみなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる

百人一首にも入っている陽成院の歌です。

筑波山から流れる男女川(みなのがわ)。
最初はちょろちょろと細いわき水だったのがやがて深い男女川となったように、
私のひそやかな恋心もつもりつもってこんなに深い思いになっちゃいましたよ。

て感じでしょうか。


こんな歌を引用してみたのは誰かに恋して淵になってるわけではもちろんなく。
先月30日、この歌のモチーフになった筑波山に登ってきたから。
放っておくと飲んだ食ったの話ばかりになってしまうので、たまには文章に知的風味な演出をまぶしたかったのです。

ガイド役を買ってでてくださったのは、つくば在住&つくば某大学で教鞭をとるY先生。
道連れはT書店M女史&ヤングM女子。

「冬山って言っても高尾山に毛が生えた程度ですよ。富士山登ったいのうえさんなら大丈夫!」
とか軽〜く言われてほいほいついていった筑波登山の経緯は、倒れてもタダでは起きない『倒れるときは前のめり。』(ヤングチャンピオン連載中)に描くので、よければ読んでやってください。
ついでに次回『ごっつ!マザー』(YOU連載中)は増量8Pのオリンピックネタです。こちらもどうぞよろしくです(宣伝おわり)。

で、筑波山。
こんなふうになってます(登るのに必死で全景撮り忘れてます)。


こうして見ると(って私の絵を見て何がわかるのかと言いたい気持ちはひとつこらえて)男体山のほうが高く見えます。
けれど実際の標高は女体山が877メートル、男体山が871メートルで、ほんのすこーし女体山のほうが高いのです。

しかも女体山は岩が切り立つ絵に描いたようなマウンテントップ。


一方、男体山山頂は土産物屋さんや茶屋が軒を連ねるのどかな光景。


ちなみにここでいただいた「つくばうどん」。

けんちん汁系具材であったまりました。

もちろん、男体山を直接登るコースは相当険しいらしいのですが。
名前からイメージする光景とはずいぶん違います。
登ってみないとわからないことってあるもんですねえ。

陽成院は、実際の筑波山に登ったことはおろか見たこともないらしく、噂に聞く西の山に流れる男女川を想像し、自分の恋心をかさねて先の歌を詠んだそう。
今も昔も妄想力は創作の源です。

さらにググってみると、実際にも筑波山は古代の昔から男女の出会いの場だったということで、男女が酒や食べ物を持ち寄って筑波山に集まり、恋の歌の掛け合いをする「歌垣」という風習があったらしいです。



面白いのは、この歌垣で最初に歌を詠みかけるのは男性側であったというところ。
ルールが決まっていた訳でもなさそうですが、女子的にも
「やっぱ〜男から声かけられるようでなきゃ一人前の女じゃないよね〜。自分からアクション起こすのってちょっと〜」
的なスタンスが基本だったらしい。

まず男性が勇気をふるって求愛の歌を詠み、それに女性が応えたり、あるいはつれない歌を詠んでみたりしてたわけですね。

雄々しく勇壮に見える男体山より、なだらかな稜線を描く女体山のほうがちびっとだけだけど高い。
リードするのは男性でも、見えない部分でイニシアチブを握るのは女性側。

現実の男女関係も、こんな感じのほうがうまくいってるような気がします。

って今さら気づいても手遅れなんだけど。


無心で登って無心で降りて、地上でつらつら考えて泥沼となりぬる日々です。

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Posted by いのうえさきこ at 01:03 │常なる日々