2018年08月21日

『盡忠報国 岳飛伝・大水滸読本』

北方謙三版『水滸伝』の登場人物は、敵役含めて好きなキャラだらけなのですが、個人的に思い入れのあるのが鮑旭(ほうきょく)。

幼い頃、役人に両親を連れて行かれ天涯孤独となって以来、生きるために盗みや殺し、ありとあらゆる手段を使ってきた獣のような男が、送り込まれた子午山で王進と、その母・王母(おうぼ)に出会う。
鮑旭はそこであたたかい食事と安心して眠れる寝床を与えられ、人としての礼儀作法や、自分の持つ能力を正しく使う方法を学ぶ。

王母は、読み書きのまったくできない23歳の鮑旭に文字を教えてくれる。

「鮑旭。これがお前の名前ですよ」

鮑旭は畑仕事の合間に、地面に指でそっと教わった文字を書いてみる。
鮑旭は思うのだ。

「母はほめてくれるだろう」

尊厳も品位もかなぐり捨てて生きてきた青年が、自分のことを気にかけてくれる人間に出会い、とうに忘れていた人間らしい感情を取り戻した瞬間。
文字を知り、自分の名をどう書くかを知り、あふれ出る感情にも名前があることを知るのだ。

文字には、言葉にはすごい力がある。
苦しいだけの過去も、沼のような黒い感情も、言葉にすれば救われることがある。
まだ自分を捨てなくていい、志をもって生きられると思うことができる。
自分のなかに確かにあって、でもとらえどころがなく、もやもやしていたことも、いつかきっと自分の言葉で表現することができる。
いや、言葉にしなければいけないのだと思う。それが人であるということだから。

北方謙三氏の大水滸伝シリーズは、私自身が「物語を読む」という喜びに久々どっぷりとひたることができた作品です。
強くかっこいい登場人物たちと共に生き、自身の生き方や、仕事への取り組み方や、人としての立ち居振る舞いを新たに学び直しているような、美しくてわくわくする時間でした。
文字を覚えたての鮑旭のように。

その大水滸シリーズの最後の読本
『盡忠報国 岳飛伝・大水滸読本』に圧縮漫画描きました。





もちろんこの壮大な物語を圧縮なんて、私にはとうてい不可能ではあるのですが。
登場キャラたちへの私なりの言葉をつめこんでみました。
読んでやって下さい。


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Posted by いのうえさきこ at 23:58 │お仕事