2011年03月19日

『国民の映画』

いま、あらゆる舞台やスポーツイベント等のエンタメ関連は「こんなときだからやめる」と「こんなときだからやる」のせめぎあい。
罪悪感もあるし、国内総力をあげた節電体制だからこそ、電力を盛大に使っちゃうであろう興行は、どちらを選んでも主催者や関係者にとっては厳しい選択なんだろうな。誰だって生きてくためには働かなきゃならないし。

私はそんななか、「こんなときだからやる」を選択した三谷幸喜の新作舞台「国民の映画」を観に渋谷のパルコ劇場へ。
上演中に余震が来て電車が動かなくなったときのために、水とチョコ(非常食)とマスク(花粉症用)とスニーカー(徒歩帰宅用)持参で。我ながらちょい大げさかもと思っていたが、いっしょに行った友人はレギンス(帰宅難民になって避難所に泊まるとき用)を持って来ていた。ちょっと

と思った瞬間。

震災以来、気持ち的にも消費的にも物理的にも行動がミニマムになってしまい、渋谷に降り立ったのも初だったのだが、節電で街なかのあらゆる電飾やオーロラビジョンが消え、営業している店も店内照明は薄暗く、街全体がトーンダウンしたようで、とても渋谷とは信じがたい光景。
渋谷はもともと劇場に足を運ぶ以外近づかないし



そこまで思い入れのある土地ではないのだが、このときばかりは、

渋谷はもっとギンギラギン(byマッチ)で猥雑で、ちょっと疲れるけど、突拍子もなく新しいものが生まれる、心が浮き立つような場所じゃなきゃ!とか思ってしまった。
まあ今はしかたないけど。

パルコ劇場内の照明も全体的に落としたなか、芝居の前、三谷さんから東北関東大震災被災者の方々へのお見舞いの言葉と、「こんなときだからやる」という一演劇人としてのスタンスを語るあいさつあり。
短く簡潔ながら、笑いのなかに真摯さがこもった三谷さんらしい語りで、集まった観客からも心からの拍手が生まれていた。

で、「国民の映画」。
舞台は第二次大戦下のドイツ。
登場人物はナチスの宣伝大臣ゲッベルスを中心に、家族と執事と周囲の映画人やナチス高官をまじえた12人。
絶対的権力のもと苦渋の思いを飲み込み、どんな状況下であろうと、どんな形であろうとも芸術の世界で生きたいと願うおのおのの人物を描いた群像劇。

登場するキャラは個性的だし笑いもたっぷりまぶされているし、達者な役者さんばかりで二幕合わせて3時間を飽きず観られたのだが、この設定だとどうあってもラストは暗くならざるをえない。せつない観劇感。
でもトーキー時代の俳優であり、ナチスと手を結んだ映画監督という役どころの風間杜夫の明るさ、口が軽い大女優役シルビア・グラブの華やかさ、人間的であろうとするゲーリング元帥の白井晃には救われた。
個人的には、所作がスマートで仕事ができる、ゲッベルスの従僕フリッツを演じた小林隆の存在感が一番しみたなあ。


とにかくいろんな意味で、忘れられない舞台のひとつになりました。

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Posted by いのうえさきこ at 13:53 │常なる日々