2010年09月18日

ハーパー・リーガン

パルコ劇場で長塚圭史×小林聡美で「ハーパー・リーガン」

以下ちみっとネタバレ。

主人公はどこにでもいる平凡な中年女性。
そこそこ責任のある仕事と癖のある上司を持ち、家にはなにやら事情ありげな夫と、優秀で美人な娘。
埠頭で出会った少年との会話に、ちょっとした生活のほころびをかいまみせるものの、いたって常識的な節度ある大人の女。

しかしながら2幕目、主人公は怒濤の時間を経験する。
今まで腫れ物のようにあつかってきたもろい価値観がこっぱみじんになるような。
母娘、父娘、父息子、父娘、対夫、行きずりの若い男、行きずりの年上の男、他人である母の現夫、いまやプチストーカーとなってしまった息子のような年の男、ついでに上司。

それらのよくある、あるいは不思議な関係が、たった2日2晩のあいだにつぎつぎとコマ送りのように繰り広げられて行く。
舞台セットは閉塞感のある家庭の象徴である箱庭のような家や、都会を象徴するような殺伐とした壁だけの空間。
そのなかで主人公も回りの人間も、奇妙に、唐突に、そして静かに毒を出し切るのだ。

翻訳劇ならではな会話に最初なかなか入り込めなかったのだが、読後感というか観終わった後の空気感は悪くない。
自分の中に日々降り積もっている澱のような思いも同時に解き放たれたような気分。

もちろん気持ちを解き放ったところで現実は決して美しくはないし、未来への解決も見つからない。
行きずりの男に怪我をおわせ、革ジャンを盗み、適当に知り合った男とセックスをして、職も失ってしまう。
元々もろい砂上にギリギリのところで形を保っていた家族は、崩壊寸前にまで追いつめられる。

そんな状態なのに。
それでもハーパーは責め立てる娘に言うのだ。

「それでもやっぱり生きてるほうがいい」

と。


蛇足だが。

中庭かなんかの朝食風景で、ハーパー演じる小林聡美がトーストにバターを塗るシーンがあったのだが。

と心の中でつっこんでいた客は、私だけではあるまいと確信している。

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Posted by いのうえさきこ at 23:59 │常なる日々