2010年05月22日

『裏切りの街』

演劇ポツドールの三浦大輔書き下ろし作品『裏切りの街』(←音出ます)でパルコ劇場。

いやーめちゃめちゃ面白かった。

人妻・秋山菜津子とフリーター(てかほぼヒモ)・田中圭とのずるずるとした関係を主軸に、2人の周囲の、これまたろくでもない、そしてどこにでもいるだらしない人間の日常が、これでもかってぐらいリアルに描かれていく。
主な登場人物は若者カップルと中年(なんだけど結婚2年目の)夫婦。
実年齢の若さに関係なく、いろんなことをゆっくりあきらめた、倦怠感あふれる人たち。
もう観ているだけで胸がちりちりする。
なぜなら私もそんなだらしない、先送り人生を生きている人間のひとりだから(そうはなりたくないと思ってはいるけれど)。

田中圭は大好きな俳優さんだが、今回の役どころはあの細い肩に手をかけてぶんぶんゆさぶりたくなるぐらい、マジでいらつくキャラ設定。

積極的な悪意があるわけではなく、見た目も頭も決して悪くない。言われたことはそれなりにこなせて、それなりに友達もいて、それなりにモテたりもして。そこそこ善良でもありながら、「自分では何も決めない」「アクションを起こさない」というだらしなさゆえに、日常はぐずぐずと煮くずれていく。

「やればできるんですよね~。イチローぐらいには。あ、でもやっぱ年200本も打ったりするのめんどくさいか~」
「明日からがんばるから。バイトも探すからね」
あいまいな表情のまま同棲している彼女から毎日2000円もらい、人妻とずるずるセックスしてる若い男の、なんという救いのなさ。

仕事やる気はないけど、彼女とのエッチもめんどくさいけど、性欲だけはきっちりある。
ってこれじゃヒモの役目すら果たしてませんが(秋山演じる十分いい大人のあきらめきれない主婦も同じスタンスなんだけど)。
中央線沿線が舞台なのだが、「あーこういう子いるいるいる!」と、自分のことを棚に上げておばちゃん憤りまくりでなのであった。

まあここまで思い込めるのも三浦大輔の脚本と演出の力。
会話の流れや言葉選びのセンス、初対面で出会ったときのなんともいえない居心地の悪い間合いもいい。
いっしょに行った社長が「映像で観たかった」と言っていたが、確かに映像的演出かも。映画化も視野にあるかもしれないなあ。

もちろんこんなのすべてが現代の若者の感覚とは思ってないけど、いまどきのそういう無気力な気分を描いているっていう点ではいいとこついているんだろう。

「こつこつ努力したってどうせどうにもならない」という状態へのぼんやりした絶望感、みたいな。

確かにかつてより結果がともないにくい時代なのかもしれない。
生まれたときからそういう時代に生きてきて、そういう状況しか知らなければ、希望も生まれにくいのかもしれない。
知らず知らずのうちに閉塞感や諦念みたいなものが、しみついちゃってるのかもしれない。

でも、たとえ結果が出なくても、正しい方向に努力したことは絶対に本人の血肉になると思うし。
刹那的ですぐ手に入る快楽よりも、地道な積み重ねから得られる喜びは宝物だし。
結果的に傷つくとわかっていても、血まみれ泥まみれになっても行動することが糧となるのは若いうちだけだし。
「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」(by早川義夫)の裏返し、かっこ悪いことは実はすごくかっこいいことなんだから。


て、感想がなんか全然違う方向に流れちゃってるけれども。

ついつい熱く語ってしまう体感温度の上がるお芝居だった。
おそまきながら三浦大輔、今後チェックしていかなければ。

ちなみに噂のセックス描写は予想通りてんこもり。
田中圭と秋山菜津子とのからみが下世話で猥雑であほっぽくて良かった。
銀杏BOYZの音楽もこの世界観にばっちり。
気鋭の若手の才能と、実力派の俳優陣にしてやられた舞台なのでした。

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Posted by いのうえさきこ at 23:59 │常なる日々