2009年10月16日

お隣同士というのは、家単位でも県単位でも国単位でも仲が悪いと相場が決まっているが、共著の文章を担当しているナガハマ先生出身・京都と私の出身・滋賀の関係も例外ではない。

もっとも憧れているのは滋賀ばかり、京都は滋賀のことなんざシガにもかけていない(だじゃれ…)のが現実で、意識すればするほどに、相手はなんとも思っちゃいないという片思い状態がかれこれ794年から現代まで続いている。たぶん。

ナガハマ先生と出会ったのはもう10年以上前のこと。
ふたりともまだ大阪を拠点に仕事をしていたとき、某グルメ雑誌d誌でたまたま同じ特集の仕事を組んだのがきっかけだ。

打ち合わせに指定された場所はミナミのうらぶれた喫茶店。
椅子もテーブルもなんとはなしにささくれだっている。
隣の席では『ナニワ金融道』に出てきそうな、あきらかに堅気ではないおっさん2人が、大量の極彩色パチもんバーキンを前に大雑把な値付けをしていて、不穏な空気まんまん。

大阪でもキタ界隈の比較的スマートゾーンで生息していた私は
「なんちゅうおっとろしいとこや。きっとこういうところで奥歯ガタガタいわされるんやな」
と心臓ばくばくさせながらも、平静を装い初対面のナガハマ先生と、同じく初対面の東京から来た編集さんと名刺を取り交わす。

ナガハマ先生の第一印象は
「べっぴんさんやなあ」
「おもろい人やなあ」
「頭のいい人や」
「あ〜、京都の人なんや。かいらしい雰囲気やなあ」

打ち合わせ開始後3分。
取材する店や料理のことを数度やりとりしただけで、ナガハマ先生はまじまじと私の顔を見て、おっとりとしたイントネーションで、しかしはっきりと言い放った。

「いのうえさんて、ほんまガラ悪いねえ」




「…滋賀がガラ悪いんちゃうで! 私がガラ悪いだけなんやで!」

自分でもよくわからない、情けない反論をしながら私は思っていた。
「京都人は大阪人より怖い」


ナガハマ先生のこのキャラ、「鱧」そのものだなあと最近思う。

鱧がなければ京都の夏は始まらない(こんな時期に夏の話をするのはなんなんだけど)。
祇園祭あたりに出始め、五山の送り火あたりに旬が終わる、京都を代表する高級食材。

淡白で上品な味わいとは裏腹に、鱧そのものは大変に凶暴な牙を持った獰猛な性質の肉食魚。鱧の語源が「食(は)む」から来ているというのも超納得だ。鱧の身が甘いのも、エビやタコや小魚や、普段からいいもん食べまくっているせいに違いない。

なんだかんだとつきあいが続いて(本まで出しちゃって)いるが、ナガハマ先生を初めて見たときに感じた印象は、実は今もあまり変わっていない。
それもまた恐ろしい。

そしてかように食えない性格なのに、なんだかんだでみな飽きずにこの人のところに集まってくるのが、お隣の県民としてはいささか悔しかったりするわけなのだ。


■ナガハ「モ」先生インタビュー出演、追加情報。

福岡KBCラジオの午前の帯番組「ブギウギラジオ」(9:00〜12:00)。
10/20(火)オンエアーで電話インタビューあり。

岐阜FMの午前の帯番組「Morning Bird」(7:30〜10:00)。
10/21(水)オンエアーで電話インタビューあり。


『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』
(文:永濱敬子 漫画:いのうえさきこ 発売:講談社 税込1050円)
  

Posted by いのうえさきこ at 05:05『食わせろ!県民メシ』