2015年12月04日

『うまなみ』から『食わせろ!』から『味自慢!』へ

ブログを更新しようとしたらIDとパスワードをセットで忘れてて、問い合わせるのを後回しにしていたらもう師走、というわりとありがちな日々を過ごしておりました。

ナガハマ先生こと永浜敬子さんとの共著

『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』(講談社)

の中国語繁体字版ができました。
現地のタイトルは

『味自慢! 日本47都道府縣美食地圖』



出版社のクレジットには「遠足文化」とあります(なんかかわいいな)。

漫画部分の書き文字が、すべて漢文調の書き文字に置き換えられており、
台湾のスタッフによるその膨大な作業工程を思うと、我涙的感傷浸臥…



ちなみにこの連載、雑誌掲載時のタイトルは

『うまなみグルメ国体』

でした。
今思うとなんでこのタイトルつけちゃったんだろう、ナガハマ先生、編集Nさん。
いや、好きなんだけどね。
と、今よりちょっと若かった頃の自分のセンスに思いをめぐらす、そんな年末進行中です。  

Posted by いのうえさきこ at 16:39『食わせろ!県民メシ』

2009年11月20日

いぶりがっこ

見つけづらいが、全国各地の書店にひたひた堅実に置いていただいているはず『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』(講談社)の打ち上げで、ナガハマ先生&担当S君と共に東北居酒屋「なまはげ」六本木店へ。

S君のご長女名付け話やナガハマ先生のラジオ出演音源などを聞きながら、いぶりがっこチーズ、比内地鶏の串焼き、松尾牧場の馬刺、どんどん餃子、桃豚の溶岩焼きなど、東北名物を太平山を飲みながらもりもり。横手やきそば、ババヘラアイスで〆。

なんだかんだと女子っぽい話もつきず、なまはげショーを2回も見てしまうことに。
この日2回目、前に立ったなまはげには「おめ、ずいぶん長居してるけんど、ちょっと飲み過ぎでねェが?」と体の心配までしてもらう。
なまはげにやさしい言葉をかけてもらうとは、私もずいぶん弱ったものだ。
いや、嬉しかったです。なまはげの中の人、ありがとう。

いぶりがっこを初めて食べたのは、もう5年ほど前になるだろうか。秋田の秋之宮温泉で泊まった旅館の朝食の一品としてそれはあった。
一口食べてこりゃびっくり。


予想以上に大きな声を出していたらしい

素朴なんだけど木の香りがこうばしくて歯ごたえもあって、ものすごく好みの味。

「なまはげ」で食べたいぶりがっこには、ごくごく普通のプロセスチーズをはさんであったのだが、これまた意外なことによく合っている。ワインとかでもいけそうな気がする。クリームチーズもありなんじゃないかな。
ああ書いてるだけでお酒が飲みたくなってきた。

たくあんをアレンジした料理つながりで思い出したのが「たくあんのたいたん」(どこにでもある家庭料理と思い込んでいたのだが、wikipediaでは「京都、滋賀、福井、石川に分布する」としか書いていない。そうだったのか…)。
要はたくあんの煮物だ。
塩抜きした「ひねたくあん」をだしとしょうゆとみりんで煮た、我が家では非常にベタなごはんのおかずだった。
たくあんのパリパリ感がなくなってやわくなり、大根の甘みがほんのり感じられて、最後に散らす鷹の爪がピリリと全体を〆ていて。

ごはんにとっても合うのだが、ぶっちゃけ子供の頃は「地味なおかずだな〜」としか思わなかった。
しかしまあ


(『ビフォーアフター』風)。


大人になるとどんなごちそうより(いやごちそうは今も大好きだけど)、こういった家庭料理が無性に食べたくなってしまう。
なんせ自分ちの畑で育てた大根を、自分ちでたくあん漬けにし、古くなったたくあんをまたまた煮物にして、自分ちで作った米のおかずにしているのだ。
今から思うと、なんとぜいたくな食体験をさせてもらっていたんだろう。

シャキシャキの大根サラダも、しみしみのふろふき大根もおいしいけれど、とことんまでいぶり倒して漬け倒して煮倒して、最後まで飽きずにおいしくいただく大根の食べ方がある。

旬は一度きりではない。あきらめなければ、きっと何度だって違う形で輝ける。

……こういう一文を付け足さずにはいられないのも、きっと私が古たくあんになったせいなんだろうなあ。

『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』
(文:永濱敬子 漫画:いのうえさきこ 発売:講談社 税込1050円)
  

Posted by いのうえさきこ at 15:38『食わせろ!県民メシ』

2009年10月30日

ジンギスカン

仕事で小さな奇跡を起こさなければいけないウィーク中でした。

奇跡、というのは奇跡のように面白い原稿を描く、ということではなく、わたくし的にいまだかつてない物量の漫画を描いた、ということなわけですが。
こうして精神的にも身体的にも強い負荷がかかる戦いがいざ一段落した今、とてつもない開放感と同時に、描いた原稿の報酬以上にネット通販でポチしてしまっているという苦い現実に飲み込まれそうになっております。
奇跡を起こしたのも、その同じ右手で「カートに入れる」をクリックしたのも自分。
この事実を厳粛に受け止めたいと思っています。

とにもかくにも今はすがすがしい気持ちでいっぱい。

奇跡仕事の隙間、珍しく「怒髪天」がゲスト出演というので朦朧とした状態でTV視聴。
「怒髪天」は東京に来て社長に教えてもらって以来、都内でやっているライブにはほぼ顔を出せている唯一のバンドなのだ。

彼らの音楽のテーマは主に「酒」と「労働」。

ライブでは「この歌は私のためにある!」と叫びそうになる曲が数百はある(数字は言ってみただけ。いくら彼らがサービス精神満点でもそんなには演奏できません。なんとなく熱き心のフリ幅としての数値です→数百)。

で、イメージにたがわず怒髪天メンバーも日々まっとうに飲んだくれてるわけだが、なかでも非常にわかりやすく「酔っぱらい」オーラをまとっているのが作詞とボーカルを担当している増子直純、通称アニィ。

地元出身バンドということで北海道の夏フェスRSRにもほぼ毎年出演しているのだが、その暑苦しいパフォーマンスとは別に、RSRキャンパーたちの間で名物となっているのが増子アニィのしどけない泥酔姿。
自分たちのステージが終わるやいなや文字通り浴びるように飲み始め、朝だろうが夜だろうが真っ昼間だろうが、フェスが終わるまで酩酊は続く。怒髪天の出演時間が最終日のトリに近い場所に設定されていたある年は、飲み過ぎにもほどがあるアニィの体を心配した主催者側の配慮のタイムスケジュールではないかと噂していたほど。

ちなみに名曲『酒燃料爆進曲』インディーズ時代のPV。声と顔がちょっと若い!
http://www.youtube.com/watch?v=cpIBuzNoncU&feature=related

増子さんに限ったことではないが、そういう状態の人間というものはたいてい人としてダメな状態。

ダメかっこいい。

はやらないとは思うけど好きだから言ってみた。

もちろんファンのほうも承知の上で、キャンプエリアや物販エリアを朦朧とさまようアニィに声をかけ、共に酒を酌み交わし、少なくないテントが「増子直純専用御休処」のノボリをかかげてアニィ巡礼をお待ち申し上げたりしている。

私も去年そんな状態のアニィを見つけ、いっしょに写真におさまってもらったりした。
あとで見たら、雄大な北の大地とどこまでも青い空をバックに、顔を真っ赤にしたヘタレな酔っぱらいがふたり写っていた。



北海道には美味しいものが星の数あれど、私にとって北海道の味覚のゴールデンペアはやはりジンギスカンとビールだ。

どこまでいっても日常で、毎日汗とか冷や汗とか流しながら生きてる。
ちょっとダメなところもある、けれど愛すべき人たちの食べ物と飲み物。

高級じゃないけど力がわいてくる。
あか抜けないけどクセになる。
ちょっとクサいけどそこんとこがまたたまんなく旨い。

このために生きている。
これで明日も生きていける。

「生きてるだけでOK!
ま、いろいろあるけど」

(怒髪天『全人類肯定曲』より)

ちなみに明日、日本シリーズが北海道からスタートするわけだが。
どんな結果になろうとも、お互いここまで生き残ったことにまずは乾杯したいのだ。


『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』
(文:永濱敬子 漫画:いのうえさきこ 発売:講談社 税込1050円)
  

Posted by いのうえさきこ at 18:53『食わせろ!県民メシ』

2009年10月16日

お隣同士というのは、家単位でも県単位でも国単位でも仲が悪いと相場が決まっているが、共著の文章を担当しているナガハマ先生出身・京都と私の出身・滋賀の関係も例外ではない。

もっとも憧れているのは滋賀ばかり、京都は滋賀のことなんざシガにもかけていない(だじゃれ…)のが現実で、意識すればするほどに、相手はなんとも思っちゃいないという片思い状態がかれこれ794年から現代まで続いている。たぶん。

ナガハマ先生と出会ったのはもう10年以上前のこと。
ふたりともまだ大阪を拠点に仕事をしていたとき、某グルメ雑誌d誌でたまたま同じ特集の仕事を組んだのがきっかけだ。

打ち合わせに指定された場所はミナミのうらぶれた喫茶店。
椅子もテーブルもなんとはなしにささくれだっている。
隣の席では『ナニワ金融道』に出てきそうな、あきらかに堅気ではないおっさん2人が、大量の極彩色パチもんバーキンを前に大雑把な値付けをしていて、不穏な空気まんまん。

大阪でもキタ界隈の比較的スマートゾーンで生息していた私は
「なんちゅうおっとろしいとこや。きっとこういうところで奥歯ガタガタいわされるんやな」
と心臓ばくばくさせながらも、平静を装い初対面のナガハマ先生と、同じく初対面の東京から来た編集さんと名刺を取り交わす。

ナガハマ先生の第一印象は
「べっぴんさんやなあ」
「おもろい人やなあ」
「頭のいい人や」
「あ〜、京都の人なんや。かいらしい雰囲気やなあ」

打ち合わせ開始後3分。
取材する店や料理のことを数度やりとりしただけで、ナガハマ先生はまじまじと私の顔を見て、おっとりとしたイントネーションで、しかしはっきりと言い放った。

「いのうえさんて、ほんまガラ悪いねえ」




「…滋賀がガラ悪いんちゃうで! 私がガラ悪いだけなんやで!」

自分でもよくわからない、情けない反論をしながら私は思っていた。
「京都人は大阪人より怖い」


ナガハマ先生のこのキャラ、「鱧」そのものだなあと最近思う。

鱧がなければ京都の夏は始まらない(こんな時期に夏の話をするのはなんなんだけど)。
祇園祭あたりに出始め、五山の送り火あたりに旬が終わる、京都を代表する高級食材。

淡白で上品な味わいとは裏腹に、鱧そのものは大変に凶暴な牙を持った獰猛な性質の肉食魚。鱧の語源が「食(は)む」から来ているというのも超納得だ。鱧の身が甘いのも、エビやタコや小魚や、普段からいいもん食べまくっているせいに違いない。

なんだかんだとつきあいが続いて(本まで出しちゃって)いるが、ナガハマ先生を初めて見たときに感じた印象は、実は今もあまり変わっていない。
それもまた恐ろしい。

そしてかように食えない性格なのに、なんだかんだでみな飽きずにこの人のところに集まってくるのが、お隣の県民としてはいささか悔しかったりするわけなのだ。


■ナガハ「モ」先生インタビュー出演、追加情報。

福岡KBCラジオの午前の帯番組「ブギウギラジオ」(9:00〜12:00)。
10/20(火)オンエアーで電話インタビューあり。

岐阜FMの午前の帯番組「Morning Bird」(7:30〜10:00)。
10/21(水)オンエアーで電話インタビューあり。


『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』
(文:永濱敬子 漫画:いのうえさきこ 発売:講談社 税込1050円)
  

Posted by いのうえさきこ at 05:05『食わせろ!県民メシ』

2009年10月11日

鮒寿司

『食わせろ!県民メシ』のネタとして、やはり最初は私の地元である滋賀の名産・鮒寿司の話を。

名産、と書いたものの、いまや滋賀の人間でも祝い事の場所ぐらいでしか口にしていないかも。お若い方なら特にそう。まして県外なら、よほどの酔狂以外、積極的に食べている人はいないと思われる。

一番の理由はご存知の通り「におい」だ。

例えるならウォッシュタイプのチーズを数日放置したような、すっぱいような、目にしみるような、ひょっとしてフェロモンのような、でも悲しいような、なんとも形容しがたい
とってもいいにおい。

しかしながら、うちの家族はその鮒寿司をなんだかんだでしょっちゅう食べていた。

実家では琵琶湖の沖島(知らない人も多いのだが、琵琶湖には4つの島があり、そのうち沖島には400人以上の人が住んでいる)のとある漁師さんと契約して鮒寿司を樽ごと買っている。
で、この漁師さんの漬ける鮒寿司がそりゃもう絶品で。
安いものではないので「何かあったとき」にしか食べないようにしているのだが、なにせ家族全員根っからのフナズシストなので、消費を抑えるのも一苦労なのだ。

「娘が里帰りしたから」といっては食べ、「息子が家に寄ったから」と言っては食べ、「孫が賞をもらったから」といっては食べ、「お正月だから」「お盆だから」「墓参りだから」「秋祭りだから」「春祭りだから」「親戚が集まったから」「お客さんが来たから」当然食べ、まあ結果的には年がら年中「食べたいときに」食べている。

でもこうして書き並べてみるとやはり、「いいことがあったとき」食べていたのだな。

だから私にとって鮒寿司の匂いと味は、いつも嬉しい、楽しい記憶と共によみがえる。


本日、この本の献本分が届いたので、実家に一冊送っておいた。
明後日あたり、父も母も「不肖の娘が新しい本を出してもらった」と言って、鮒寿司を食べているに違いない。

『食わせろ!県民メシ 47都道府県のお国自慢グルメ』
(文:永濱敬子 漫画:いのうえさきこ 発売:講談社 税込1050円)
  

Posted by いのうえさきこ at 19:31『食わせろ!県民メシ』