2018年11月16日

贋作・桜の森の満開の下

久々のNODA・MAPで『贋作(にせさく)・桜の森の満開の下』@東京芸術劇場。
言わずと知れた野田秀樹の大傑作。
初見は勘九郎と七之助のコクーン歌舞伎バージョンだったかと思います。



隠喩と暗喩と言葉遊びにまみれた安定の野田秀樹ワールドが炸裂しまくった2時間ちょい。
野田さんの言葉のひっかけが、作品のすみずみにまで巧妙にはりめぐらされていて、最初くだらない(ほめてます)セリフに失笑していても、あとで壮大なテーマのリターンがどかんときて、聞き漏らせない感じ。
そこがちょっとしんどいときもあるのだけど、今回は壮大な舞台演出と熱い演者の存在感に有無をいわさず圧倒されました。

作品のキーワードにもなっているのですが、
「いやあ、まいった、まいった」

Kindle版のシナリオが324円という破格のお値段で売っていたので思わず買ってしまった。
実際声に出してみると、目で読むだけではわからない台詞回しの妙が感じられて二度おいしい。

おっそろしいほどに美しいあまみん、純粋で繊細な耳男の妻夫木聡、皆とてもよかったけれど、怖くて可憐な夜長姫を演じた深津絵里の死に方が、泣けるほどきれいだった。こういう舞台に出られたら役者は幸せだろうし、この瞬間に立ち会えるのがやっぱり最高なんだな。  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台ライブ

2018年08月15日

ミラステ

『炎の蜃気楼 昭和編』の「環結」となる舞台を観に、新宿スペース・ゼロ。



2014年の初演から観てますが、原作者桑原水菜氏の壮大な世界観と、それを支える読者・観客の熱量、それらに応えるべく、回を追うごとに厚みと説得力を増すキャストやスタッフたちの芝居と演出。
そうそう、舞台ってこうやっていろんな才能や思いがよってたかって、ぶつかって、それをぎりぎりの線でまとめあげて、必死で作り上げるもんだよなー。
と改めて思わされた。
幸せな舞台を観ることができました。

で、その熱気のままのあれやこれやを語りながら酒を飲んで、気がつけば16日の朝ですよ。



でも日記は15日の日付のまま更新します。
終戦の日。いい一日でした。ありがとう。
  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台

2018年07月21日

レインマン

藤原竜也と椎名桔平W主演の舞台『レインマン』@新国立劇場中劇場。

ダスティンホフマンとトムクルーズのコンビで大ヒットした映画の舞台化です。
2006年の舞台化のときチャーリー役だった椎名桔平が、今回は重いサヴァン症候群の兄であるレイモンド役を演じていて、これがもうすごくすごく良かった。
ラストは静かに泣きました。



明日は山に行くので、日記は休みます。
  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台

2018年06月16日

『ニンゲン御破算』

Bunkamuraシアターコクーンで『ニンゲン御破算』。



初演は2003年。
十八代目中村勘三郎(当時中村勘九郎)のために松尾スズキが書き下ろした幕末時代劇を、今回キャストを変えての再演です。

「ああ、確かにこの役は勘三郎だ」
と思わせてくれる、明るいんだけどどこか悲しみと闇をかかえる芝居好きの主人公・実之介。
武家の惣領として生まれ、奉行から密命を任されるほどの刀の腕前を持ちながら、歌舞伎の座付作者としての夢をあきらめきれず、自身の人生をモチーフにした芝居を作っていくなかで、現実世界と人間関係がのっぴきなくからみあい、作品の生みの苦しみとつじつま合わせの海にのまれ、溺れて行く。

勘三郎バージョンは観ていませんが、今回の阿部サダヲには完全にこの実之介がのりうつっていたと思います。

他のキャストも、多部ちゃんはもちろんめちゃかわいかったし、
岡田将生はその美しさをいかんなく生かしつつ終始いじられまくっていたし、
もちろん他の大人計画の役者さんも達者な方々ばかりで、冗談抜きで笑いっぱなしの2幕3時間半でした。

いやしかし。
何不自由ない環境で育ちつつ(まあ葛藤はあるのですが、ネタバレになってしまうのでそれはさておき)、お門違いの歌舞伎の作品作りに没頭して苦しむ実之介は、憧れの狂言作家・鶴屋南北(松尾スズキ)に絞り出すように言うのだ。

「ほめられたい…!」

ここのシーンが、帰って来てからじわじわきてます。
私にとっては、くだらなくて、脱力して、笑って、笑って、
やがて胸がしめつけられるお芝居でした。
  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台

2018年05月19日

ハングマン



『ハングマン』@世田谷パブリックシアター。
マーティン・マクドナー脚本×長塚圭史演出

イギリスでかつて「二番目」に腕利きだった絞首刑執行人(hangman)のハリーが経営するパブで、家族やなじみの客を巻き込んで繰り広げられる、ブラックコメディ。
とにかくセリフ量が膨大で、マクドナーの書く、いかにも英国人が使いそうなシニカルな言葉の海におぼれまくった3時間弱でした。

新感線や「おっさんずラブ」の笑いが


なら

こちらの「ハングマン」は

こんな感じ。

こういう静かで皮肉っぽい味わいの芝居にはなかなか出会えないので、好きな人はかなりお好きかと。
長塚圭史のクールな演出も、こういうちょっと斜に構えた脚本だと生きますね。
私はけっこう好き。面白かったです。

家族愛は一応あるんだけど、そこそこクズでちょっと狂気をはらんだ男ハリーを演じるのが田中哲司。
笑えるぐらいキャラにハマってます(褒めてます)。

前職である「ハングマン」の誇りにかけてしでかしてしまうとんでもない事件も、真実には近づかないまま放りっぱなし投げっぱなしな感じのラストへとなだれ込むのですが、人生のありとあらゆる局面も、だいたいはこういう感じで、明確な決着なんかつかないままなんとなく、ただぼんやりと過ぎていくものだよな…
と、そんな厭世的なことを感じてしまうお芝居でした。
  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台

2018年04月14日

『修羅天魔〜髑髏城の七人』Season極



「IHIステージアラウンド東京」こけら落とし公演もついに最終Season。
劇団☆新感線『修羅天魔〜髑髏城の七人』Season極を観てきました。

この『髑髏城の七人』は劇団☆新感線で長年かけられている、いのうえ歌舞伎の演目の一つ。
今回のこけら落としでは、基本同じストーリーをキャストや演出を替え「花」「鳥」「風」「月」の4シーズンに分けてほぼ一年かけて上演していたもので、新作『極』をもって無事すべてコンプリート観劇いたしました。

それぞれのSeasonにそれぞれの役者や演出の妙があって、どのシーズンがベストとかはとてもとても決められないのですが、あえてマイベストキャストを組むとしたら

捨之介:小栗旬or松山ケンイチ
天魔王:森山未來
無界屋蘭兵衛:早乙女太一
兵庫:青木崇高
狸穴二郎衛門:近藤芳正
贋鉄斎:古田新太
沙霧:清野菜名
極楽太夫:りょう


Season極のキャストは新作扱いなので上記からははずしています。
さらに早乙女太一がだんとつで所作も佇まいも美しかったので入れられなかったのですが、「月」シーズンで無界屋蘭兵衛を演じた三浦翔平もすごーくすごーく良かった!
普段TV等ではほとんどチェックしていなかっただけに、また舞台に出てくれたらぜひ観たいと思える役者さんになりました。

はああー、夢のようなキャスティングだわああ。
ただ、現実にこのキャストで上演されたとしても、それ最高!とはやっぱりならないだろうなあ、ということはわかります。
一時期巨人のスタメンが全員クリーンナップみたいな状態になってた時も、特に連勝できてた記憶ないし。

主役のようなまぶしい輝き方でなくても、自分の立ち位置で、自分にしかできない輝き方をする。時には影に徹する。それぞれのキャストがそれぞれの役割を演じきったときに、忘れ得ぬ作品になるのでしょうね。

とはいえ、やはり今日極楽太夫を演じた天海祐希はごちゃごちゃした理屈がふっとぶほどの、神々しいまでの美しさ。



観た人はすべて寿命が延びると思います。
私はどうやらまた長生きしてしまうようです。



  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台

2018年03月10日

『江戸は燃えているか』

『江戸は燃えているか』@新橋演舞場
脚本演出:三谷幸喜 
出演:中村獅童 松岡昌宏 松岡茉優 高田聖子 八木亜希子
飯尾和樹 磯山さやか 妃海風 中村蝶紫 吉田ボイス
藤本隆宏 田中圭

役者さんは力も華もある人ばかりだし、三谷さんの得意な幕末ものだし、さすがに笑えるシーンも多くて、全員が全力であえてのベタでばかばかしい設定を演じているおかしみ、みたいなのはわかるのだけど。
いつもの三谷芝居にある、ラストすべてのジグソーパズルのピースがカチッとはまるあの気持ちよさが…ない。

一言で言うと



でもそれなら松竹新喜劇を観るからなー。  

Posted by いのうえさきこ at 23:59舞台